内間健友『14年勤めた会社をやめて〝働く〟〝生きる〟を聞いてきた。』感想。あなたの悩みに応える一冊

「今のまま同じ会社で働き続けていいのだろうか」
「今とは違う人生があるのではないか」
40歳前後の会社員なら同じような感情を抱いたことがあるのではないでしょうか?私も同様に悩んだことがあります。著者の内間健友さんも同じように悩んだ末、沖縄の新聞社に14年勤めたのち38歳で退職しました。
今回紹介する『14年勤めた会社をやめて〝働く〟〝生きる〟を聞いてきた。』は、上記のような感情を抱えてしまった著者の内間健友さんが様々な人へインタビューし、内間さんが自身の気づきを得るとともに、同じような悩みを抱える人の助けになればと思い書かれた本となっています。
本書の中に登場する13人の方々は、年齢や職業、経歴もすべてバラバラな沖縄県出身者。小説家・ 落語家・バスケ指導者・平和教育ファシリテーター・ラジオパーソナリティー・元国連開発計画防災専門職員など。
- やると決めたら、空いている時間を全部つぎ込むと考えた
#1 知念実希人 小説家/医師 - やらない方が後悔する。やってみてから考えたらいい
#2 金原亭杏寿 落語家 - 笑われてもいいから高い目標を立てることが大事
#3 安里幸男 バスケットボール指導者 - 〝分からない〟を追求したことが情熱へと変わった
#4 狩俣日姫 平和教育ファシリテーター/株式会社さびら共同創業者 - やりたいことを自分で口にするように意識している
#5 玉城美香 ラジオパーソナリティー/カフェ経営 - 目標達成って、たぶん原則は同じ
#6 仲村秀一朗 元国連開発計画防災専門職員/元米州開発銀行職員 - 兼業を続けた先に生まれる〝新たな融合〟が、社会を動かす種に
#7 豊川明佳 沖縄大学・大学院教授/有限会社インターリンク沖縄取締役 - あたりさわりのない歌詞で満足なのか? 迷いの果てに見つけたもの
#8 比嘉栄昇 BEGINボーカル - どこで仕事をしても相手は人間。構えたり不安に思ったりしない
#9 金城拓真 海外(アフリカ)起業家 - 夢は叶う、叶えるもの。自分を知り信じてあげることが大切
#10 知念美加子 ファッションスタイリスト - あなたがそれを選んで、あなたの心が喜んでいることが重要
#11 中村亮 ドラマー/作曲家 - 自分の体を動かして、感受することを大事にしている
#12 山城知佳子 映像作家・美術家/東京藝術大学先端芸術表現科准教授 - 自分を信用する。自分の気持ちを大事にする
#13 内間政成 お笑い芸人・スリムクラブ
インタビューされる皆さんは、沖縄に関する方々なので、私も実際にお見かけしたことがある人やその名前は聞いたことがある人たち。でも、その人のバッググラウンドを知らなかったので、そこを知ることができたのがとても興味深かったです。
すでに成功していると思われるような人たちでも、過去には苦しみ悩んだ時期があり、それを乗り越えて今があるということを知ることができます。また、それぞれの方々から語られる言葉に勇気づけられ、「もっと頑張ろう!」と思うことができました。
共感するポイントがいくつもあったのですが、ラジオパーソナリティーの玉城美香さんとバスケットボール指導者の安里幸男さんの2人のことを取り上げて紹介します。
まず、ラジオパーソナリティーでもある玉城美香さんが語った以下の言葉。
「私は、やりたいと思ったことを、自分で口にするように意識しています。(中略)〝私はレポーターをやりたい〟と言うことで、気がつけば、自分もちゃんとそれに向かって動くようになっていたし、私の言葉もちゃんと届いてくれていた。だから、言葉にすることって大事だなって思っています」
私は「いつかそうなるといいな」と、自分の想いを胸に秘めてしまい、あまり表立って公言しないタイプ。でも、過去に「⚫︎⚫︎さんに会ってみたい」や「⚫︎⚫︎をやってみたい」と口にしたことで、実際にそのことが実現したことがあります。

自分の叶えたいことを口に出すことって本当に大事だと思います。
玉城さんはその後も、〝いつかスタジオで一人喋りがしたい〟という夢を20代後半で叶え、その後も、〝将来はカフェを開きたい〟という夢を予定よりも前倒しで実現しています。そこへ辿り着くまでは順風満帆ではなく、多くの苦悩や試練があったことが本書の中で書かれています。
人生や仕事で迷っている人への助言として、自分の人生だから、自分がしかつくれない。やりたいことは時間がかかってもいいし、やってもいいと思う、と語っています。何かを始めるのに遅すぎることはないんだなと考えさせられました。
次に紹介するのは、バスケットボール指導者の安里幸男さん。
沖縄でバスケットをやっている人なら、「安里幸男」の名を知らない人はいないのでは?と思えるほど、沖縄バスケ界での名将。

スラムダンクに登場する陵南高校の監督・田岡茂一のモデルとしても有名です。
身長が高いことが有利と考えられているバスケットボール競技。1978年、安里さんが率いる辺土名高校は全国高校総体に初出場。無名校の小柄な選手たちがコートを駆け回り、得点を重ねていく。最終的には初出場で全国3位という記録を残し、“辺土名旋風”と呼ばれる沖縄バスケの歴史を作りました。
安里さんは大会前、自身の指導ノートに〈日本のバスケットボールの方向性を示すようなゲームを必ずやろう〉と書いていたようです。そして、当時のことについて以下のように語っています。
「やっぱり目標を立てて突き進めば達成できるもんだと、笑われてもいいから高い目標を立てることが大事だと思ったね」
ただ目標を立てるだけでなく、人に笑われてしまうほどの高い目標を立てるというのがすごいと感じました。
余談ではありますが、私自身、高校時代にバスケットをやっていたので、私の中で安里幸男さんは「北谷高校の安里監督」の認識。直接の関わりは無いものの、つい「安里監督」と言ってしまいます。社会人になってから少し言葉を交わさせてもらったことがあります。ほんの少しのやり取りでしたが、バスケットがとても好きな人だなという印象を受けたのを覚えています。
本書には多くの方々が登場するので、読んだ人は何かしらの刺激や心に響くポイントがどこかにあるはずです。今の自分の現状に少しでも悩んでいるのであれば、ぜひ本書を手にとって一読いただけたらと思います。