読書

三浦しをん『政と源』。下町に住む老人幼なじみの物語。

book政と源

三浦しをんさんの2013年の作品『政と源』です。

三浦しをんさんの作品を読むのはこれで3作目で、これまで『風が強く吹いている』『舟を編む』を読みました。

元銀行員で真面目な国政とつまみ簪(かんざし)職人で破天荒な源二郎。全く正反対の性格ながらも長年付き合いのある東京下町に住む73歳の幼なじみをテーマにした作品です。

家族のために一生懸命に仕事をしてきた国政は妻に出ていかれ、娘にも相手にされず一人で寂しく過ごす日々。

一方で、つまみ簪職人でやんちゃな性格の源二郎は、妻に先立たれ国政と同じく一人身ですが、弟子に慕われ周囲の人々にも愛される不思議な魅力を持っています。

読み始めてもなかなか世界観に入り込めなかったのですが、中盤ほどからようやくスイスイと読めるようになってきました。

主要な登場人物は国政と源二郎の他にも、源二郎の弟子・徹平とその恋人・マミがいるのですが、この2人もいい味を出しているんですよね。

幼なじみの2人は日々を楽しく過ごしてはいますが、73歳という高齢です。否が応でも「死」を考えてしまう歳のためか、最後の2人のやりとりが印象的でした。

「もう桜も終わりだな」

「また来年があるさ」

「来年の桜を見られるのか、俺たちは」

「さあなあ」

「俺たちが見られなかったとしても、来年も再来年も桜は咲くさ。それでいいじゃねえか」

国政と源二郎の友情やそれぞれの奥さんとの恋愛話など、読み終えると心が温かくなる作品でした。

実はこの作品のことは全く知らず、図書館でぶらぶらと物色していると出会いました。装丁に特徴があったから目に付いたんでしょうか。この装丁をぜひ一度見てほしいなと思います。

あと、この作品には挿絵が何点かあります。イラストがあると、キャラクター像がイメージしやすくなりますが、反対に自分で想像する楽しさが失われてしまうんですよね。そういう点では、個人的には無い方がよかったんじゃないかなと思いますね。