
伊坂幸太郎さんの陽気なギャングシリーズ2作目です。
前作の記事については、こちらに書いています。【読書感想】伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』
ということで、『陽気なギャングの日常と襲撃』を読んだ感想を書いてみようと思います。
陽気なギャングシリーズ2作目
本書は『陽気なギャングが地球を回す』の続編となっており、あとがきで伊坂幸太郎さん本人も言っていますが「前作を読まないと絶対に駄目」というわけではありません。でも、前作を踏まえた部分や主要登場人物のキャラを知ってもらったほうが楽しめると思うので、順番通りに前作から読んだほうがいいかなと思います。
陽気なギャングシリーズは様々な特殊能力を持った4人の人物が銀行強盗をする話です。
- 人が嘘をついているかどうかを見抜く、人間嘘発見器の才能を持った男、成瀬。
- でたらめな言葉を並べて人を引きつける演説の名人、響野。
- 人間より動物が大好きなスリの天才青年、久遠。
- 精確な体内時計を持つ女性、雪子。
本作は、第1章から第4章までの構成となっていて、4人の銀行強盗たちそれぞれが主役となる短編4つとなっています。そして、第2章以降は、銀行強盗後の話になっています。
4人の日常が垣間見える本作
第1章は下記の4タイトルの短編になっています。ちょっと不思議なタイトルですが、全て作品の中で出てくるセリフなんですよね。
「巨人に昇れば、巨人より遠くが見える」
市役所に勤める成瀬が部下の大久保とともに、人質事件と強盗事件に関わることになり解決に導く話。成瀬の職場での立ちふるまいを見ることができます。
「ガラスの家に住む者は、石を投げてはいけない」
響野が経営する喫茶店の客が体験した、不思議な出来事を解決していく話。酔っ払って帰った朝起きると、見知らぬ女性からの書き置き。飲みに行った店の店長に聞いても、そんな女性はいなかっと言われてしまいます。
「卵を割らなければ、オムレツを作ることはできない」
派遣社員の雪子は、同僚の女性と変わった出来事に関わります。同僚女性はひょんなことから人気役者の舞台のチケットを手に入れます。仕事の都合で観に行くのを諦めかけますが、そこで雪子のナイスフォローで無事に観に行くことができます。
「毛を刈った羊には、神も風をやわらげる」
久遠は、偶然出会った男性が暴行にあった事件を解決するため動きます。久遠はひょうひょうとしていますが的確に事件を解決に導いていきます。
正直言うと、この第1章は読んでいてあまりワクワクしなかったんですよね。作品中に様々な伏線が張られ、それが繋がっていくのが醍醐味の伊坂作品。この4作品はそれぞれ独立した印象でした。しかし、第2章からの物語にしっかりと繋がっていたので良い意味で期待を裏切られ、結果的に満足した内容でした。
第2章からは、4人がいつもどおりの銀行強盗をするという話になります。その銀行強盗の流れで、大手ドラッグストアの社長令嬢の誘拐事件に関わる話になっています。銀行強盗の4人が誘拐事件を解決するという、悪人なのに正義の味方のように活躍しちゃうのが面白い。
簡単に解決できるかと思ったところで誘拐犯に裏をかかれてしまい、今度こそどうしようもないピンチ!という状況にも陥ります。しかし、本作でも伊坂作品らしい結末になっていて、読み終わったあとはとてもいい爽快感でした。
このギャングシリーズでは、僕は嘘を見抜く名人「成瀬」が好きなんですが、前作に続き本作でもいい活躍してます。仲間である、響野と久遠を手のひらで転がす感じがいいですね
気楽に読むことができる楽しい犯罪小説となっており、気分をスカッとさせたい人にはおすすめの作品です。