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川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』感想。誰でも好きなようにアートを楽しんだらいいんです!

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目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

2021年に出版された、川内有緒さんの『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』を読みました。

本書は「Yahoo!ニュース|本屋大賞2022 ノンフィクション本大賞」を受賞しています。

タイトルを見て、誰もが「目が見えないのに、どうやって美術鑑賞?」と疑問に思うはずです。私もそこが気になってしまい、本書を手に取った1人です。

本書を読むことで、美術鑑賞への価値観や「障害」というものについて考えさせられるきっかけになるはずです。

それでは、川内有緒さん『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』を紹介します。

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著者について

ノンフィクション作家・川内有緒(かわうちありお)さんは、映画監督を目指して大学進学するも断念。

大学卒業後に行き当たりばったりで渡米し、米国ジョージタウン大学で中南米地域研究学修士号を取得。米国企業や日本のシンクタンク、フランスのユネスコ本部などに勤務し、国際協力分野で12年間働きます。

2010年より執筆活動を開始し、『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』で新田次郎文学賞、『空をゆく巨人』で開高健ノンフィクションを受賞しています。

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』あらすじ

本書について、出版社・集英社インターナショナル公式サイトより紹介文を引用します。

一緒に見る、その先に見えてきた世界とは──

白鳥建二さん、51歳、全盲の美術鑑賞者。年に何十回も美術館に通う――。
「白鳥さんと作品を見るとほんとに楽しいよ!」
という友人マイティの一言で、アートを巡る旅が始まった。
絵画や仏像、現代美術を前にして会話をしていると新しい世界の扉がどんどん開き、
それまで見えていなかったことが見えてきた。
アートの意味、生きること、障害を持つこと、一緒に笑うこと。
白鳥さんとアートを旅して、見えてきたことの物語。

白鳥さんとの美術館巡りの中から、アートのことはもちろんですが、障害のこと、社会問題のこと、多くのことに対して気づきを与えてもらうことができます。

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』感想

本書では、全盲の白鳥健二さん、著者の川内有緒さん、そして川内さんの友人・佐藤麻衣子(マイティ)さんの3人が美術館でのアート鑑賞をしているやりとりなどが書かれています。

有緒:うーん、馬だね。馬が下を向いているんだよ。
マイティ:え、どの馬のこと? 馬は二頭いるよね?
有緒:そうだよね、白いのと茶色いの。じゃあ、こっちの右側が闘牛士かな
マイティ:そう、きっとひとだよね、なんか闘牛士の上にテントみたいのがあるんだけど。
有緒:これ、テントじゃなくて布じゃない?
マイティ:ああ、そうか。これで闘牛してるんだね。でも、闘牛って普通、牛は一頭だよね?
有緒:そうだったかな。
マイティ:スペインで闘牛見なかったの?
有緒:見てない。でもメキシコでは見た気がする。あー、でも全然覚えてない。

話をすればするほどカオスは深まる一方だ。

P.21 第1章 そこに美術館があったから

その会話のやり取りを見ていると、同じ絵を鑑賞してもその受け取り方は人によって全然違うんだなと感じさせられます。

ひどい説明ですみませんね、トホホ……と白鳥さんのほうを見ると、「面白いねー」とこれまで以上に喜んでいる様子だ。え、どういうこと?

「ふたりが混乱している様子が面白い」

どうやら彼は、作品に関する正しい知識やオフィシャルな解説は求めておらず、「目の前にあるもの」という限られた情報の中で行われる筋書きのない会話こそに興味があるようだった。逆に、作品の背景に精通しているひとが披露する解説は、「一直線に正解にたどり着いてしまってつまらない」と言う。ひとつの作品でもその解釈や見方にはいろんなものがあり、その余白こそがいいらしい。

P.22 第1章 そこに美術館があったから

白鳥さんは、同行する川内さんとマイティさんの絵に対する解釈(会話)を聞くことで、作品を「見ている」のだと知ることができます。

本書を読んだことで、美術鑑賞に対する価値観を変えさせてもらいました。

「作品の見方に正解はなく、もっと自由に観ていいんだ」と、美術鑑賞のハードルを下げてもらったような気がします。

美術鑑賞に行っても静かに絵を鑑賞し、その絵の解説文などをじっくり読むというようなことをすることばかりだったので、その受け取り方の違いを意識することはあまり無かったなと思います。

また、作中での会話のやり取りを見ていると、自分もその輪に混ざって一緒に美術鑑賞をしているような感覚にもなりました。

水戸芸術館現代美術センターの森山純子さんが、白鳥さんへスタッフ研修の講師を依頼した目的の話も印象的でした。

「それは、見えるひとと見えないひとの差異を縮めることではありませんでした。むしろ視覚障害者の方々と一緒に見ることで、美術館や学芸員、そして鑑賞者のわたしたちのほうも得るものがあると感じました。作品の見方というのはとてもパーソナルなもので、見えているひと同士でも必ずしも一致しないものです。障害の有無は関係なく、その認識のズレを対話することで埋めることができるのではと思いました」

それは、助ける、助けられるという関係が反転するような新たな発想だった。

P.90 第4章 ビルと飛行機、どこでもない風景

障害当事者を講師とした研修というと、「障害を持った人をどのようにサポートしたらいいのか」のような内容になりがちです。しかし、森山さんが考えたのは、作品には多様な見方があるというのを認識するためのものでした。

「第9章 みんなどこへ行った?」では、風間サチコさんの以下の作品が登場します。

  • 《ディスリンピック2680》(2018年)
  • 《ダイナマイトは創造の父》(2002年)
  • 《ゲートピアNo.3》(2019年)

この章では人権についての問題について触れられています。話のテーマとしては重たいものではありますが、かなり私の心に響きました。

これらの作品を私が一人で観ることがあっても、ここまで考えることはなかったと思います。作品で描かれる対話によって、その背景を深く考えさせられました。

おわりに

まとまりのない内容になってしまいましたが、『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』の感想を書きました。

読み終えた後は、美術館へ足を運んでみたくなりました。

また、この作品が視覚障害者でも楽しむことができるように配慮されていることに驚きました。本書の奥付(巻末)にあるQRコードから申し込むことで、本書のテキストデータをダウンロードすることができます

本書はアートについて知らなくても楽しめますので、ぜひ手に取ってみてください。

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沖縄県在住の読書好きなサラリーマンブロガー。
沖縄のお店やお出かけスポットなどの情報、趣味の読書に関することなどを雑記的に書いています。
「Yahoo!ニュース エキスパート」 地域クリエイターとしても活動しています。
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