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川内有緒『パリでメシを食う。』感想。パリに住む日本人10人の物語

ヒージャ
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2010年に出版された、川内有緒さんの『パリでメシを食う。』を読みました。

川内さんの作品を読むのは本書で2作目。はじめて読んだ『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』で川内さんの他の著書にも気になって手に取ったのがきっかけです。

『パリでメシを食う。』というタイトルだったのでパリの食事に関する話かと思っていましたが、パリで生活している日本人10人について、現地での暮らしの様子やパリで生活することになった経緯などを描いたエッセイ集となっています。

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作中に登場する方々は、著者の川内有緒さんがフランスの首都パリに在住していたころに同時期にパリで暮らしていた日本人10人。

「三ツ星レストランを目指した料理人」「オペラ座に漫画喫茶を開いた人」「フランス人に騙されて無一文になった鍼灸師」など。もちろんですが、日本に住む私では想像もつかない人生を送っている人ばかりです。

  • 三つ星レストランを目指した料理人
  • “不法占拠” アトリエで自由になったアーティスト
  • 路上のドラマを切り取るカメラマン
  • 先手必勝、オペラ座に漫画喫茶を開いた起業家
  • 手仕事に情熱を燃やす女性テーラー
  • ファッションの最先端で「一瞬」に生きるスタイリスト
  • 孤高のヨーヨー・アーティスト
  • 恋に仕事に突っ走る国連職員
  • 三度海を渡った鍼灸師
  • 家族とアフリカと哲学を愛する花屋

今回はこの中から印象に残った、「孤高のヨーヨー・アーティスト」について感想を書きます。

ハイパーヨーヨーを趣味で始めたYukkiさんは、10代という若さで世界大会で準優勝という実績を出します。しかし、その後どうしたらいいのか分からなくなってしまいます。

この現状を変えようと思ったYukkiさんはヨーヨーで大道芸をはじめ、高校卒業後にフランスにあるサーカスの学校に行くことになります。学校生活で様々な経験を詰み、卒業後にはサーカスのほか映画にも出演するなど、ヨーヨーだけで生活できる環境になります。

こんなにすごいパフォーマンスをするYukkiさんですが、フランス・パリではヨーヨーの技の難易度ではなく、ヨーヨーでの表現を求められたようです。そこに対してどうしていけばいいのか悩んでいます。

今、行き詰まってます。日本や世界の大会で求められるのは技の難易度とスピード。でもフランスで求められるのは、表現力。だから、今の自分は何を表現したらいいのかわからなくなっちゃって……。技術はいくらでも伸ばせるんですよ。でも、今はそれを求めてないんです。技術だけでみたら、僕よりうまい人がうじゃうじゃいるんですよ。わー、こんなのできるんだ、とか思います。昔の自分はやっぱり難易度で勝負してた。だから昔の僕を知っている人には『前のほうがよかった。昔のYukkiに戻って欲しい』と言われることもある。でも、もう自分は戻る気はないです。僕はフランスを、そしてサーカスを選んだんです」

「パリでメシを食う。」18区 孤高のヨーヨー・アーティスト P.221

本書では、川内さんと明るく話をするYukkiさんの雰囲気も伝わりますが、それと同時に「死」について語るシリアスな面も見られます。

Yukkiさんにすごく惹かれたので、彼のヨーヨーパフォーマンスを見てみたいと思いネット検索。YouTube動画がありましたので共有します。想像していた以上のパフォーマンスで圧巻でした。

そして、「今はどこで活躍しているんだろう?」と気になったので、さらに検索していると驚きの事実がわかりました。

Yukkiさんは、2012年6月に公演先のドイツで不慮の事故に遭って亡くなっていました。26歳という若さで。本書を読むまではYukkiさんのことは知らず、本書を読んで彼の魅力に惹かれたので、すごく悲しく切なくなってしまいました。

私の今後の人生でパリに住む可能性はほぼゼロに近いのだけど、日本ではない異国に住む経験をしてみたいなと思わせてくれる作品でした。

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沖縄県在住の読書好きなサラリーマンブロガー。
沖縄のお店やお出かけスポットなどの情報、趣味の読書に関することなどを雑記的に書いています。
「Yahoo!ニュース エキスパート」 地域クリエイターとしても活動しています。
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