伊坂幸太郎『AX』(アックス)感想。最強の殺し屋でサラリーマンパパの物語

伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズ3作目となる『AX』(アックス)を読みました。
この作品は、2018年本屋大賞にもノミネートされ、殺し屋シリーズの中では私が一番好きな作品です。
- 『グラスホッパー』(2004年)
- 『マリアビートル』(2010年)
- 『AX』(2018年)
それでは、伊坂幸太郎『AX』を紹介します。
あらすじ
超一流の殺し屋という裏の顔を持ちながらも、表の顔は恐妻家の普通のサラリーマンである「兜」。殺し屋の仕事のことはもちろん家族に秘密。
息子が生まれたことをきっかけに、殺し屋の仕事から手を引くことを考えますが、なかなか簡単に抜けることができません。
抜けたいと思いつつも、淡々と依頼をこなしていきますが、思わぬところから襲撃を受けてしまいます。
AX アックスの主要な登場人物
三宅(兜)
本作の主人公で、裏の世界では「兜」の名前で活動する。表の世界では妻に頭が上がらない文房具メーカーの営業社員。
三宅克巳
三宅の高校生になる息子。妻の機嫌をうかがいながら生活している三宅の理解者。
医者
「兜」に裏世界での仕事を与える者。表の世界で診療所を開いている。「手術をする」は殺害する、など医療用語に変換された言葉を使って仕事の話をする。
感想(少しネタバレあり)
とにかく、殺し屋「兜」の恐妻家ぶりが面白いです。
「兜」は妻の機嫌を損ねないように、日々の経験をもとに妻に対応しています。妻の尻に敷かれているようで、口には出さないけど実は家族のことをとても大切に思っている「兜」がステキです。
自分自身が家族愛というものを知らずに育った「兜」。
守るべき家族ができたことで裏の仕事に対する姿勢が変わってきます。どうにか裏の世界から抜け出したいと考えるが、仕事を与える「医者」は、「辞めるにはお金が必要です」と、そう簡単に組織から抜け出すことを許してくれません。
殺し屋「兜」が主人公の作品ですが、普通のサラリーマンで父親である三宅のほほえましいエピソードもところどころに入るので、読んでいてほっこりします。
第2章「BEE」でのスズメバチの駆除のくだりは、そのときの情景をイメージして読むとクスッと笑えてしまいます。がんばれお父さん!という感じです。
伊坂幸太郎さんの作品では話の視点が登場人物ごとに変わるのに特徴がありますが、今回の作品ではほとんど「兜」。最後までこの調子かなと思ったら、最終章「FINE」で息子・克巳が主となった話になってきます。
第4章「EXIT」で「兜」が急に死んでしまい、あまりの突然のできごとに驚いてしまいました。死んだと思わせておいて、実は生きていたというような大どんでん返しも期待したのですが、さすがにその予想は外れました。
ボルダリングジムで友達になったけど、とある事件がきっかけで姿を消してしまった松田さんとのストーリーはなんだかこっちもショックを受けてしまいました。終盤に松田さんがからんでくるのかと思いましたが、それもありませんでしたね。
伊坂さんの作品の特徴に、伏線の回収による大どんでん返しですが、本作ではそこまで驚かされることは無かったかなと思います。
「兜」を狙ったスズメバチの行方や、依頼で回収した箱のことなど、謎が残るまま終わってしまった気がします。今後の作品に絡んでくるのでしょうか。
おわりに
『AX』は、伊坂幸太郎さんの作品で味わういつもの爽快感とは違い、家族の「ほっこり」とした愛情を感じることができた作品でした。
これまでの殺し屋シリーズの『グラスホッパー』や『マリアビートル』との繋がりも持たせている点は、やっぱり伊坂幸太郎さんですね。
作品間の繋がりはありますが、それぞれは独立しているので『AX』単独で読んでもまったく問題ありません。ぜひご一読ください。
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