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村田沙耶香『生命式』感想。自分の常識が覆されてしまう危険な短編作品集

ヒージャ
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『コンビニ人間』で2016年に芥川賞を受賞した、村田沙耶香さんの『生命式』を読みました。

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『生命式』は2019年に発刊された短編集で、2009年から2018年の間に発表された12の短編が収録されています。

収録されている作品
  1. 生命式
  2. 素敵な食材
  3. 素晴らしい食卓
  4. 夏の夜の口付け
  5. 二人家族
  6. 大きな星の時間
  7. ポチ
  8. 魔法のからだ
  9. かぜのこいびと
  10. パズル
  11. 街を食べる
  12. 孵化

本作品を読んだ率直な感想として、好き嫌いがはっきりと分かれる小説だと感じました。

それでは、村田沙耶香さん『生命式』の感想を書きたいと思います。多少のネタバレもありますので、気になる方はご遠慮ください。

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思わず1ページに戻る「生命式」

本書の表題作でもある「生命式」。社内でランチをしている女性社員の話から物語はスタートします。

1ページ目を読み終わり、2ページ目を開いて読んでいると、「え、何の話!?」と一瞬混乱。ページを飛ばしてしまったのかと勘違いし、思わず1ページに戻ってしまいました。

人が亡くなった際に「葬式」の代わりに「生命式」という式を行うのが一般的になった世界の話になっています。

今までの当たり前が当たり前ではなくなった世界。倫理観が変わり、「人肉を食べる」という風習が当たり前の世界。

風習に従って人肉を食べる自分たちはおかしいのでは?という疑問を、偶然であった男性に池谷は聞いたところ、以下のように言われます。

「いえ、思いません。だって、正常は発狂の一種でしょう? この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」

村田沙耶香『生命式』P.44

「正常は発狂の一種」

これまでの非常識が常識となることもあり、「常識」「非常識」という考えは、時代や場所によって変わっていくものなんでしょうね。

グロテスクな表現も多く気持ち悪さがところどころに垣間見える本編ですが、続きが気になってしまいどんどん読み進んでしまう不思議な感覚に陥ります。

夜が深まって、空も海も漆黒だった。山本の命がゆっくりと私の肉体に吸収されていく。私は山本と融合した一体の生命となって、懐かしい水に足を浸したまま目を閉じた。

村田沙耶香『生命式』P.49

静かな形で締めくくられるラストについては、これまでの内容とのギャップに村田沙耶香さんの文章表現の凄さを感じました。

発狂じみた内容で、「生命式」が行われるような世界になる可能性は無いとは思いますが、絶対に来ないとも言い切れないような不思議な作品です。

今の価値観をいい意味で裏切る作品

2編目の『素敵な素材』も、1編目の『生命式』と似た雰囲気がありました。

日常のファッションについて話をするという普通の会話でありながら、その内容は現実離れしています。若干の気持ち悪さを感じます。

「残酷」という言葉について、同じ言葉を使いながらも、その言葉への価値観の違いからお互いに糾弾しあうシーン。当たり前だと思っている「価値観」が揺さぶられます。

『素敵な素材』を読んでいると、ふと本書の表紙の絵を思い出しました。

なんだか意味ありげな本作の表紙の絵。燭台に乗っている黒い物体、よくよく見てみると謎が解けた気がします。多分、この『素敵な素材』に通じるのではないでしょうか。

この2編目を読んだとき、「このまま最後まで読み続けて、メンタル的に大丈夫だろうか?」とちょっと不安になりましたが、この作品以降は若干テイストが変わった気がします。

11編目『街を食べる』は道端の野草がテーマになっていて、不思議な世界観です。この世界観のまま終わりを迎えるのかと思っていたら、ラストのセリフに思わずゾッとしてしまいました。

仮に映像化されたら、トラウマになってしまいそうなセリフです。

村田さんの作品を読むのは、本作『生命式』が初めてでしたが、この作品はなんと表現したらいいのだろう。

ヒージャ
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ホラー?SF?

とりあえず村田さんの他の作品も読んでみたくなる、虜になってしまいそうな世界観の作品でした。

おわりに

はじまりの「生命式」「素敵な素材」でグッと心を掴まれ、最後まで不思議な世界観で頭が混乱してしまう短編集でした。

グロテスクな要素も若干あり、読む人によっては好き嫌いが分かれてしまいそう。しかし、僕は今の価値観を考えさせられてしまう内容が好きでした。

個人的は小説として楽しめた作品ですが、これから読む人に一言だけ。心が落ち込んでいるときには読まないほうがいいです。

自分の中の常識が覆される作品『生命式』。読んだら絶対に記憶に残る作品です。気になる方はぜひご一読ください。

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沖縄県在住の読書好きなサラリーマンブロガー。
沖縄のお店やお出かけスポットなどの情報、趣味の読書に関することなどを雑記的に書いています。
「Yahoo!ニュース エキスパート」 地域クリエイターとしても活動しています。
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