大島和人『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』感想。バスケットファンなら必読の一冊

スポーツライターの大島和人さんの『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』(以下「B.LEAGUE誕生」)を紹介します。
かつて、日本バスケットボール協会(JBA)は、国際バスケットボール連盟(FIBA)から「国際試合出場停止」という重い処分を受けたことがありました。
その主な理由としては、当時日本国内に企業チーム(アマチュア)とプロチームが混在する「NBL」と完全プロの「bjリーグ」という、2つの異なるトップリーグが存在しているのが原因でした。
現状を見れば分かる通り、この2つのリーグは「B.LEAGUE」(Bリーグ)に統合され、FIBAからの制裁も解除されています。
日本プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」が誕生することになった経緯、以前に存在していた2つの異なるリーグ「NBL」と「bjリーグ」の歴史などを知ることができる一冊です。
日本のバスケット界の変遷について、ものすごい取材力と「こんな裏側まで書いていいの?」と思うほどの内容で、ただただ圧倒されました。
それでは、大島和人さんの『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を紹介します。
「B.LEAGUE誕生」の内容
「B.LEAGUE誕生」は下記の15章立てで構成されています。
- 第1章:Bリーグが成功した「5つの理由」
- 第2章:日本バスケ界が陥った膠着状態
- 第3章:日本協会の「応仁の乱」
- 第4章:プロ化へ
- 第5章:bjリーグの発足とスポーツ起業家
- 第6章:JBLの苦悩と男たちの奮闘
- 第7章:合流の模索
- 第8章:FIBAからの制裁
- 第9章:川淵タスクフォースの全速改革
- 第10章:第3のリーグ
- 第11章:Bリーグの基本設計
- 第12章:ゼロからのスタート
- 第13章:企業チームのプロ化
- 第14章:人材とスポンサーを集める
- 第15章:開幕
「B.LEAGUE誕生」感想
読んだ感想を一言で表現すると「読んでよかった」。
私は、小学校時代からバスケットをやっていて高校卒業までずっとバスケマン。社会人になってもしばらくは趣味でバスケットをやるほどのバスケ好きなので、「B.LEAGUE」が誕生するまでの国内のリーグの流れをなんとなく理解しているつもりでした。
「日本リーグ」から「JBL」へ名称が変わり、JBLという既存のリーグがある中、分裂する形で2005年のプロリーグ「bjリーグ」の誕生。
2つのリーグが本当に合流できるのか?
混乱した日本協会を立て直せるのか?
五輪予選までに国際資格停止処分を解除できるのか?
結末を知っていることではあるのですが、その経緯を深く知れることにドキドキしながら読み進むことができました。
日本バスケットボール協会の立て直しのためのタスクフォースが構成され、その議長として川淵三郎さんが選ばれました。
川淵三郎さんに対する私のイメージは「Jリーグ(プロサッカーリーグ)を立ち上げた人」。そんな川淵さんの名前が急に挙がったことに「なぜ川淵さん?」と、当時そのような感想を持ったのを覚えています。
本書の第9章から描かれる川淵三郎さんの日本バスケ界改革。
Jリーグは5年の準備期間があったけど、日本バスケ界改革に残された期間は4ヶ月。この短期間に繰り広げられる川淵さんのスピード感あふれる敏腕に圧巻です。
2016年9月22日、東京の国立代々木第一体育館で行われたBリーグの開幕戦。対戦カードはアルバルク東京 vs 琉球ゴールデンキングス。
この対戦カードが決定した経緯やその時の裏側も書かれています。
余談ですが、この開幕戦時にメディアが、NBL側のアルバルク東京を「エリート集団」、bjリーグ側の琉球ゴールデンキングスを「雑草集団」という表現で煽っていたのは懐かしい思い出(笑)
そもそも、バスケットボールの試合がゴールデンタイムで生中継されるなんて、これまでのことを考えられないですよ。
2つのリーグが統合し、Bリーグとして今では大成功という成果を収めている日本バスケ界ですが、本書を読むと皮肉にも内部の力だけでは2つのリーグが統合することは永遠に無かったのではと思えてきます。
FIBAからの制裁という外部からの圧力と、川淵三郎さんという外部から招き入れた強力なリーダーシップがあったからこそ、『B.LEAGUE誕生』にたどり着けたのではないでしょうか。
おわりに
沖縄県民の私は、bjリーグのチームとして「琉球ゴールデンキングス」が立ち上がることになった当時のこと、bjリーグでの盛り上がり、Bリーグ開幕戦のことなど、当時の記憶を思い出しながら沖縄目線で読むことができたのでよかったです。
新リーグ・Bリーグへ移行する以前のことを少しでも知っている人はもちろんのこと、何も知らなくても「Bリーグ大好き!」な人はぜひ読んでもらいたい一冊です。

読書好きな私の「小説10選」記事もぜひご覧ください。

Twitterの声
【気になる本】『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』大島和人https://t.co/wDpKOwpx2F
— 丸善ジュンク堂書店劇場📚 (@junkudo_net) January 30, 2021
紆余曲折をたどってきた日本のバスケ界。混乱がどう収拾されB.LEAGUEの成功は実現したのか。bjリーグの発足、JBLの苦悩、合流の模索、川淵タスクフォースの全速改革。関係者の証言でバスケ界の奇跡を綴る。 pic.twitter.com/yDgUWwrKZP
大島和人さん@augustoparty 「B.LEAGUE誕生」読了。
— 元安 陽一 Yoichi Motoyasu (@YoichiMotoyasu) January 26, 2021
「bjリーグには、未来が必ずしも約束されていないプロバスケに、勇気と志を持って飛び込んだスタッフたちがいた。にもかかかわらずBリーグ発足を機に、バスケから離れた人材が多い。」
多くの方々の顔が浮かびます。
bjリーグがあったから今がある。 pic.twitter.com/WlqS1mzs8o
大島和人氏著書
— チトセ (@chitooo13) January 18, 2021
【B.LEAGUE誕生】
第3章の"日本協会の応仁の乱"はまさにタブー(と思う)の部分まで触れて書かれており、ビジネス秘史とあるがこれは歴史本だわ。
なんなら小学校で習うべき内容が多く詰まっている。(主観ですw)
今のバスケ界があるのはこういった背景があると思うと感慨深い。 pic.twitter.com/0T0EfP1FQu