映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』感想。書籍では知ることができなかった新たな視点
「2022年 Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞」で大賞を受賞した作品『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』をご存知ですか。
著者の川内有緒さんが、「全盲の美術鑑賞者」白鳥健二さんと美術館巡りをしていく作品です。白鳥さんと美術鑑賞していくことで、それまで気付かなかった新たな視点に気付かされたり、白鳥さんとの対話からアートだけでなく、視覚障がい者や社会について考えさせられるノンフィクション書籍です。
その書籍を原案とした映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』が、沖縄市・コザの街にあるシアタードーナツ・オキナワで上映されていたので観てきました。
シアタードーナツ・オキナワとは
沖縄市・コザの街中にある「シアタードーナツ・オキナワ」は、2階建てのミニシアター。各階に一つずつスクリーンがあり、それぞれ座席数が20席ほどでソファでくつろぎながら映画を楽しむことができます。
当初はシアタールームは2階だけでしたが、車椅子や足の不自由な人でも楽しんでもらいたいという思いで、1階にもシアタールームが増設されました。
代表の宮島さんセレクトする映画はどれも素晴らしく、鑑賞後は他の人にお勧めしたくなるものばかり。映画がさらに好きになるシアターです。
『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』あらすじ
目の見えない人はどうやってアートを見るのだろう。
恋人とのデートがきっかけで初めて美術館を訪れた全盲の白鳥建二さん。その日、作品を前に語られる言葉を聞きながら「全盲でもアートを見ることはできるのかもしれない」と思うようになった。そして自らあちこちの美術館の門を叩いた白鳥さんは、いつの間にか「自由な会話を使ったアート鑑賞」という独自の鑑賞法を編み出した。それは、期せずして、目の見えるひとにとっても驚きと戸惑い、そして喜びを伴う体験であった。
全盲の白鳥健二さん、原案書籍の著者でこの映画の監督でもある川内有緒さん、そして川内さんの友人・佐藤麻衣子(マイティ)さんの3人が美術館でのアート鑑賞をしているやりとりなどが描かれています。
『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』感想
私は原案の書籍も読んで、事前知識を入れた状態で映画を鑑賞しました。映画では書籍内のエピソードのほかにも、映画でしか見ることのできない部分もあります。
しかし、書籍を読んでいなくても問題なく楽しめる内容です。何も知らずに観るほうが印象を強く感じることができるかもしれません。
全盲の白鳥さんがどのようにして美術鑑賞をするのか、どういう思いでアートに向き合っているのかなどを映画を通じて知ることができます。
美術鑑賞をするには知識が無いといけないのではなく、個々人が自由な感覚でアートを楽しめばいいということを学ばせてもらいました。
風間サチコさんの『ディスリンピック2680』を鑑賞しながらみんなが対話しているシーンは、書籍と映画どちらでも印象に残っているシーンです。
白鳥さんが読み上げ機械を使ってニュースなどを読んでいるシーンは書籍でも描かれていたけど、映画で実際にそのシーンを見て驚きました。私が思っていた以上の倍速スピードでした。
そのほか、白鳥さんの家での生活シーンも描かれています。全盲の白鳥さんの「日常」を見ることは多くの人にとっては初めてのことだろうし、とても新鮮な思いで見ることができました。
そういえば、原案の書籍と映画ではタイトルが微妙に違っているんですよね。
- 書籍『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』
- 映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』
“と” があるかないかで意味が全然変わりますよね。映画では「白鳥健二」という一人の人間にさらにフォーカスされていると感じました。
白鳥さんの「けんじの部屋」や写真など、書籍では描かれなかった白鳥さんの新しい取り組みにはすごく興味を惹かれ見入ってしまいました。
映画のラストで語られる、「白鳥さんにとっての幸せとは?」への回答がシンプルにもかかわらず深いなと感じました。
上映されるシアターは数少ないとは思いますが、お近くで上映される機会があればぜひ観ていただけたらと思います。