読書

村田沙耶香『マウス』女子2人の友情小説

村田沙耶香・マウス

村田沙耶香さんの『マウス』を読みました。

村田さんの作品を読むのは、インパクトがありすぎだった『生命式』以来の2作目です。

『マウス』は2008年に発刊された作品で、村田さんがデビューして2作目の作品です。

『マウス』はこんな小説

・小学生女子のスクールカーストがリアル
・小学校で出会った女子2人の友情小説
・自分ではない何かに「なりきる」

それでは、村田沙耶香さん『マウス』の感想を書きたいと思います。ネタバレの点もあるかと思いますので、気になる方はご遠慮ください。

あらすじ

小学5年生の田中律は、クラスでは地味なグループに分類されるいわゆる「真面目な優等生」。

新しいクラスの中に、ひときわ背の高く手足も長く、声を出すことなく誰ともしゃべらない、いつもぼんやりと宙を見つめ続ける子、塚本瀬里奈がいた。

瀬里奈はちょっとしたことですぐに泣き出してしまい、教室から出てどこかへ行ってしまう。

ある日、律は教室を出て行った瀬里奈がどこへ行くのか気になって、後をついていきます。そこで、瀬里奈がいつもぼんやりとしている理由を知る。

感想

物語の始まりからすぐに、瀬里奈の存在に引き込まれます。

誰とも口を聞かず、ちょっとしたことで泣いてしまう瀬里奈。背が高く手足も長いという瀬里奈ですが、物語序盤で描かれる瀬里奈の描写が少し気味悪いんですよね。

力なく身体から垂れ下がった両手と両足は奇妙なほど長く、風が吹いたら絡まってしまいそうだった。私は親戚の家の壁に飾ってある、お尻から垂れ下がった紐を引くと両手と両足が持ち上がるおもちゃの人形を思い出した。彼女はだれかが紐を引っ張ってくれるのを待っているかのように、脱力したまま椅子にもたれかかっていた。

引用元:村田沙耶香『マウス』7ページ

紐をひっぱる「おもちゃの人形」、頭にイメージできて少し怖いです。

主人公の律は「真面目で大人しい女子」のグループとして、スクールカーストで比較的「下」に見られています。

クラス内での女子グループの描写がリアルです。私が小学校の時も「あー、こういう感じのグループあったなー」と思い出されます。

本作の著者紹介欄に、

小学校の五年生のころ、「暗い女子」だった私は「大人しい女子」を見つめながら、自分との違いは何なのだろうと、じっと考えていました。

引用元:村田沙耶香『マウス』著者紹介

と書いてあるのですが、本作品は村田さんの少女期の記憶も重ねながら描かれている部分もあるのでしょうか。

それにしても、女子グループって大変だなと感じました。小学生からこういうこと考えながら学校生活を送っていたんですかね。私はのんきに遊んでいた記憶しかないです(笑)

瀬里奈は、自分の居心地のいい「灰色の部屋」の世界しか知らず、外の世界を知りません。外の世界へ引きずり出すために、律は無理矢理「くるみ割り人形」を朗読して聞かせます。

すると、催眠術にかかったように「くるみ割り人形」の世界の『マリー』として全く別人格になってしまう瀬里奈。

物怖じせずに自分の好きなように振る舞う瀬里奈が周りにはかっこよく映り、たちまちみんなの人気者になります。

スクールカーストのどん底にいた瀬里奈が、スクールカーストの「上」グループへ上がっていく様子は不思議な感覚です。

周りに自分を合わせて生きる「律」と、周りを気にせず自分に素直に生きる「瀬里奈」。全く正反対な性格の2人ですが、「喧嘩するほど仲が良い」関係になります。

外の世界に恐怖感をもっていた瀬里奈は「マリー」になりきることで、新たな世界でいきいきと過ごせるようになります。

そして、おとなしい性格の律は、大学生になりファミレスでバイトを始め、「店員」になりきることで明るく元気でいられています。

この2人のように、本当の自分とは違う別のものになりきって過ごすことがあるなと思いますし、なりきっていたものが本当の自分になることもあるのかなと感じました。

おわりに

物語序盤での瀬里奈の描写は異質さが際立っていて、少し気味悪さも感じました。どういった作品なんだろうと読み進めていくと、結果的には律と瀬里奈の二人の友情を描いた作品でした。

マリーになりきって変化していく瀬里奈に、「瀬里奈はいったいどうなるんだ…?」と気になっていき、どんどん読み進んでいくことができました。

終始、展開が気になって楽しんでいましたが、ラストは締めは個人的には物足りない感があったかな。

村田さんの他作品『生命式』のような気持ち悪さもなく、比較的読みやすい作品かなと思います。

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