原田マハ『モダン』感想。MoMAに行ってみたくなる短編集

『モダン』は原田マハさんの2018年の作品で、ニューヨーク近代美術館(MoMA)を舞台とした5話の短編集です。
- 中断された展覧会の記憶
- ロックフェラー・ギャラリーの幽霊
- 私の好きなマシン
- 新しい出口
- あえてよかった
感想
1話目の『中断された展覧会の記憶』を読んですぐに心を掴まれました。
原発事故のあった「3.11」当時、MoMAから福島の美術館に貸し出されていた「クリスティーナの世界」をめぐる話になっているのですが、心を揺さぶられるとてもインパクトのある物語でした。
「3.11」の事故のとき、外国から日本がどのように見られていたのか、被災地である福島の人たちがどういう思いで過ごしていたのかが感じることができました。目には見えない放射線の恐怖にふりまわされる人々の描写がとてもリアルで、読んでいて胸が締めつけられました。
MoMAスタッフ・杏子ハワードは、MoMA理事会からの任務によりフクシマから『クリスティーナの世界』を「救出」に行きます。そこで、福島の美術館スタッフの長谷部伸子から別れ際にあるものを渡されます。
このラストのやり取りには、思わず目頭が熱くなってしまいました。
第5話の『あえてよかった』は、日本からMoMAへ研修員としてやってきた森川麻美とMoMAスタッフのパティの交流を描いています。
主人公の森川麻美が通勤途中のコーヒースタンドでコーヒーとドーナツを買い、歩きながらドーナツをかじり、コーヒーで流し込むという朝食の「儀式」が描かれています。このなんてことのない日常を切り取った描写が、ニューヨークの朝の空気を感じられる気がして好きです。
この物語はとても短い話にもかかわらず、最後がすごくお洒落にまとめられています。
絵が好きになる小説
この本に出会うまで『MoMA』の名前を知っているだけで、その詳細については全然知りませんでしたが、本書を読んでいくうちにMoMAにどんどん惹かれていき、機会があれば実際に行ってみたくなりました。
美術館に携わる様々な人たちの話を知ることで、これまで以上に「美術館」というものに惹かれるきっかけになりました。本書に出会ったことで、少しではありますが新たな世界を知ることができました。
絵そのものを知らなくても、言葉で表される絵の描写に想像力をかき立てられます。僕はiPhone片手に、「どんな絵だろう?」と検索して、絵を確認しながら読み進めました。
本書は短編集でとても読みやすい内容にもかかわらず、アートについても学ぶことができます。アートを知っている人だけでなく、知らない人でも楽しめる作品ですので、気軽に手に取ってぜひ読んでみていただきたいです。
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